2017年11月29日水曜日

奥丸山







 中崎尾根の途中にある奥丸山は穂高西面のよい展望台だ。東は荒ぶる滝谷を急峻な尾根がしっかりと固めている。一方、西は秩父沢奥壁と秩父尾根が抜戸岳雪面の一隅を照らす。冬季ならば槍平から登るより新穂高温泉から登ると風情があっていい。週末でもコンディションが良ければそのまま槍ヶ岳まで行く事もできるだろう。特段に危険箇所は無いので静かにラッセルを楽しめる山である。
 
<アプローチ>
中崎尾根の末端から取り付く場合は新穂高からで特段考える事はない。中崎尾根上は意外に風が吹き抜ける。2400m以上は疎林となるので防風した方が良さそう。一方、右俣谷から槍平へのアプローチは雪崩のリスクがある。ドカ雪の直後は通行を控えた方いいと思う。

<装備>
傾斜が緩いのでスノーシューが有効。

<快適登攀可能季節>
通年。登山道があるのでいつでも登る事が出来る。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2017年11月15日水曜日

Alaska Kahiltna Glacier 周辺の山













 地球は広く巡るべき場所は多い。しかし、日いづる国の会社員は休暇が少ない。日本で長期休暇といえば年末年始、ゴールデンウィーク、夏季の3回が一般的である。殆どの人はどんなに頑張っても10日前後しか休む事は出来ないだろう。短い期間のために不確定な山登りは避けてフリークライミングツアーに行くという選択は肯ける。でもやっぱり荒々しい自然も味わいたい。そんなあなたにはゴールデンウィークにアラスカのカヒルトナ氷河でのクライミングが良いかもしれない。

 カヒルトナ氷河でのクライミングは内容とその気軽さから錫杖岳が4~5倍のサイズになった感じである。タルキートナの町からベースキャンプまでは飛行機で入ることが出来る簡便さだ。ここはデナリのベースでもあるので登山者は多く賑やかである。そして3~4時間歩けば、どでかい壁に岩稜そして雪稜が居並んでいる。日帰りで楽しめるルートも有るので気軽なクライミングが楽しめるだろう。その辺の壁や尾根や岩を適当に登る事もできそうだ。筆者らはハンター北壁にあるムーンフラワーバットレスというルートを登りに訪れたが、天気めぐりの都合からその横にあるミニムーンフラワーというルートを登った。こちらも長い氷壁ルートで快適なアイスクライミングが楽しめた。カヒルトナ氷河は環境が整った場所であり相対的にリスクは少ないエリアなので忙しい日本人でも何とか楽しめると思う。

 世知辛い世の中である。全ての人がやりたい事だけやって生計を立てることはできないし、それぞれの境遇がある。古きよき昭和のように遠征登山ありきの風来坊となるには恵まれた環境か相当な思い切りの良さがなければ出来ない。世界的に評価されるような登山や海外の山奥での登山は会社員には非常に困難だ。さらには、借金があったり、親の介護が有ったり、やりたくても思うように登山が出来ない方も居るだろう。
 しかし、どんな環境でも自然に深く親しむ事はできるのではないか。風土と花鳥風月を慈しむ意思が有れすべての場所は味わい深いものである。短期間での登山の成否は時の運で、山旅の要素としては極々一部だ。この旅でも登ったルートよりもタルキートナで嗅いだ針葉樹の匂いや、春を待ちわびて出てきた鳥の声、セスナから眺めたツンドラの大地を撫愛する川の流れが思い出深い。それとは別に出発前にある仕事のどたばたもまた一興である。大事なのは準備し続けること、時機を窺い続けることのように思う。それは国内の登山についても同じだろう。

社会的な価値は結果が全てである。それは登山の世界も同じ。ただ、個人の価値はプロセスにあると信じたい。

<アプローチ>
 2017年現在、羽田から国際線を利用する場合、富山きときと空港~羽田空港間の運賃は5000円程度と格安になるので新幹線やバスで行かない方がよい。これは空港維持のための補助金によるものなので、県政の動向次第では変動する可能性がある。
 アンカレッジからはタルキートナまでは予めメールでTalkeetna Taxiの予約を入れておくとよい。アラスカ鉄道を利用する事も可能だが、冬季は週一回の運行で予め予約が必要なので日程に余裕がある人向けである。 タルキートナのセスナ航空会社はTalkeetna air taxiとK2 aviationの二社存在する。こちらもメールでどちらかに予め予約を入れておかないとフライトインがスムーズにいかないと思う。航空会社の案内で国立公園への立ち入り手続きを行ってからフライトとなる。ハイシーズンのカヒルトナ氷河にはベースキャンプマネージャーが常駐している。大まかな気象情報や下山時のセスナへの連絡など面倒を見てくれる。航空会社に連絡を入れてもらい予定より早く帰ることも可能である。

氷河上の天気が明らかに悪くてフライトしても登れない状況ならばアンカレッジから近いChugachの山を登るのはどうだろう。遠望していると中々面白そうな山である。サブプランとして調査して渡航するのもいいかもしれない。

<装備>
 現在、アラスカ登山の情報が纏まって容易に手に入るのはsupertopoである。ネットでPDFを購入すれば、詳細な情報が記されている。やや情報が古いのでアプローチの氷河状態が変わっている所も多い。取り付きまでのラインは現場判断と考えておいた方が良い。天気は無料予報サイトWindguruで位置をセットすれば日本でも現地の状況を大体チェックできる。
ロープは70mが良いと思う。捨て縄は豊富に準備した方が良さそう。ルートによっては登攀中も寒いので、化繊のズボンを履きながら登っても良いかも。ガス缶はTalkeetna Taxi の運転手にメールで頼めば予め購入してくれる。MSR製が一般的である。ガソリンは途中のホームセンターで購入可能らしい。10日前後の滞在では出国から入山まで非常に忙しいので、食糧は予め日本で準備しておくのが賢明だ。筆者らはアンカレッジからタルキートナに向う途中のfred meyerという大きなスーパーで一部食糧を買い足した。なお、アラスカ州は消費税がないので買い物はお得となっている。

<登攀適期>
4月~6月で休みが取れる日程。地元の人に聞いたところ、3000m峰クラスの壁であれば5月上旬がベストらしい。緯度が高い地域の夏なので5月ならば23時くらいまでは明るい。

<博物館など>


Anchorage museum:アンカレッジ最大の文化施設で、歴史と人文学を中心に据えた展示となっている。北極圏の先住民は小さな文化単位を作り独自の感性を持っていた事が窺える。アラスカ州は19世紀にロシア帝国からアメリカ合衆国となった。その辺の近代史も興味深い。科学系の展示は子供向けの体験型で気合が入っている。しかしここは異国の地、子供を押しのけ一人楽しむ勇気がなく敗退した。人文系、自然系の図書も数多く販売している。


Alaska Museum of Science and Nature:アンカレッジ郊外にあるこじんまりした科学館である。アラスカ州はプレート境界に有る為アメリカ国内の地震が殆ど発生している地域らしい。アリューシャン諸島は火山による島弧である。ここでは1964年に発生した地震についての記録が詳細に展示されている。他にも剥製や古生物模型を展示していて何処の国でも同じような博物館があるなぁと感慨深かった。ここで「Roadside Geology of Alaska」という本を購入したがアラスカの大地をザックリと知るには良書なんじゃないかと思う。なお、当博物館に行くにはにはPeople Moverというバスを利用するのが良い。路線が沢山あり複雑なので注意が必要だ。5ドルで1日乗り放題だったかな。

Alaska Zoo:アンカレッジ郊外にある動物園で北極圏に生息する貴重な生き物を飼育している。車が無いと行きにくい場所だが、5月中旬以降であれば無料のシャトルバスがアンカレッジのダウンタウンから出ている。日程の都合から残念ながら訪れる事が出来なかった。