2016年6月30日木曜日

大長谷川 袖ノ谷






土砂は多いので魚は居ないし、滝はショボイしゴルジュは大した事はない。しかし堰堤などの人工物は少なく、周辺の谷と比べて自然が残っている方で詰らない谷ではない。結局、良い沢かどうかというのは心の所作であって人それぞれなのである。まあ、取りあえず一度行ってみると良いと思う。

という、曖昧模糊な言葉で逃げた説明をしていたのでは魅力に欠け、ルートガイドとして失格である。そして私の好む科学的かつ論理的な思考に相反するのである。では何故そのような主義に反する嘘、戯言を述べたのかというと、お道化であり、ユーモアである。「あ、この人は普段と違う主張を言って変だなあ、でもそこが粋で面白いなぁ」と思ってもらいたいという野心であったのである。もし、先述の冗談が面白くないとあなたが感じたのならば、あなたにユーモアのセンスがないか、私にユーモアのセンスが無いかのどちらかである。私の科学的・論理的思考によれば後者の確率が非常に高いように思うが、あくまで私の視点なので気にしない。

さて、本題である。物を観察する際に視点というものが重要だと思う。では視点とは何か。視点:物事を見たり考えたりする立場。観点。と大辞泉に書いてある。冒頭の「心の所作」の部分を微分すると、個人が所有する物事を見たり考えたりする立場の数であると筆者は考えている。

先ほどの「土砂は多いので魚は居ないし、滝はショボイしゴルジュは大した事はない。」のくだりは釣り師、クライマー、沢ヤの視点で見た場合に面白くない。ということを意味している。では、この沢を地質的な視点で見たらどうだろう。

この周囲の岩は飛騨変成岩類と呼ばれ、かつて日本が大陸の一部であったころに由来するものであり、その由来となった岩はざっくり言って地球の岩石誕生の歴史に近いらしい。現在の飛騨変成岩類は堆積岩にプレートの圧力が加わったり、マグマによる熱が加わったり、溶岩に取り込まれたり、非常に複雑な成因を経ているようだ。2つほど岩の写真を



片麻岩に結晶質石灰岩(大理石)が混じったものだろうか。





写真では観づらいが石の上の辺縦に黒いシワが入っている部分が石灰岩で、その隙間に何らかの火成岩が貫入している。


この2種の岩を直ぐそばで発見し出会った時、感動に打ちのめされクラクラした。大理石は石灰岩が熱変成によって方解石の結晶となった石であり、片麻岩は元有った岩(由来は色々)がプレートの沈み込みに伴って別の石になったものらしい。ということは、下の写真の岩がプレートの沈み込みによって上の写真の岩のようになったんちゃうか。という妄想が膨らみ、時の流れとその連続性、存在の神秘に心がワープして、長大で想像を絶する自然に平伏し畏怖の念が湧き上がったのである。そしてこの上もなく僥倖な心持になったのである。ここで筆者は地質学に関しては門外漢であり、あくまで少しの知識から想像を巡らしているだけであることを断っておく。他にもこの沢ではオオバギボウシやササユリの美しい花、サワグルミの大木に出会うたびに感動に打ちひしがれ、感涙に咽ぶほどであった。

例はここまでにして、本題の視点問題に戻ろう。冒頭の通り、クライマーや沢ヤ的には面白くない沢である。しかし、遡行者が動物、植物、地質、気象etcのバックボーンがあり何がしかの比較対象を持っていたのならばどんな沢だって多様であり最高に面白いと思うのである。ある人は堰堤の機能美と建築美に打ちのめされるかもしれないし、ある人はその古びた堰堤に無常を感じ宗教的な念を抱くかもしれないし、ある人は葉を打つ雨音から素晴らしい音楽を作曲するかもしれないし、ある人はイラクサの棘の痛みに詩情を掻き立てられるかもしれない。このように自然の楽しみ方の引き出しは無限大なはずだ。なので、どの沢にせよ「つまらない糞沢だった。」という評を聞くのは寂しい。それは遡行者の感性が未熟である事を明らかにしてしまうのであって、同胞として寂しいのだ。そのように感じる人は、5.8のルートを大雨の日にタビでフリーソロオンサイトトライするような演出であれば楽しいのだろうか。あ、そういえば錫杖の1ルンゼを大雨の時に登ったら困難な面白い大滝登攀になるんじゃないかな。クリヤ谷から継続遡行とすると粋である。一緒に登ってくれる人がいたら連絡下さい。ととっと話が逸れてしまったが、つまり折角の休日はどんな場所であってもポジティブにエンジョイしたいものである。

さて、何故やたら説明が長い長文ガイドとなったのかというと、お道化であり、ユーモアである。「あ、普段と違う雰囲気で変だなあ、でもそこが粋で面白いなぁ」と思ってもらいたいという野心である。私の科学的かつ論理的思考によれば、私のユーモアセンスが無いのは必定だが、あくまで私の視点なので気にしない。

<アプローチ>
庵谷の集落に発電所と堰堤の間で神社のある場所。それが良い目印となる。そこまで富山大学からおよそ1時間。

<装備>
特に何もいらないが、念のためロープ。あとは好みで図鑑。

<快適登攀可能季節>
6月~11月。虫が多い時期は鬱陶しそうだ。

<温泉>
大長谷温泉:小さいけどアットホームな良いお風呂。露天風呂はいつもぬるい。

<博物館など>
白木峰:隆起準平原の美しい山頂。最寄の駐車場から30分ほどで山頂とお手軽である。小屋は無人で開放されているので利用可能。6月下旬~7月下旬はニッコウキスゲが素晴らしい。



高熊カキ貝化石床:仁歩川と野積川の合流点にカキ貝の化石と珪化木を観察することが出来る。この地はその昔温暖な海だったのだ。マングローブ林が広がっていたらしい。

<グルメ>
県道7号線沿いのグリル高野のカツ丼はボリュームも味も文句なし。7号線から少し離れるが田村農園のきみソフトクリームは300円ながら絶品。一度ご賞味あれ。

2016年6月26日日曜日

薬師沢左俣








スケールに似合わず豪快な谷である。上部の平原地帯で水を蓄えているためだろうか水量が意外に多い。岩盤が強固なのだろうか岩は硬い。10mクラスの滝を次々掛ける様は見事だ。谷中でも明るいため、健康的な谷歩きを堪能できる。特別な装備は要らないので薬師岳に登ったついでに遊びに出かけてみると楽しいだろう。

満月の谷の夜は不気味だ。月明かりは木影を生み、その陰影によって闇を一層際立たせる。その闇は曇空の新月より暗いように思う。風でゆらりと木が揺れ、一瞬影が消えたその場所から妖しい何かが出てくるのではないかと不安になる。しかしこの谷の夜は違う。月光は開けた草原を普く照らす。木も草も虫も一様に偏りなく等しくほの明るい。

そんな朗らかな雰囲気の中、僕は僕と月と地球の三つの関係の考えて座っている。こんなとき、ウイスキーでも飲みながらかわいい女の子の手でも握って温まれば答は容易に出るのかもしれないが、横に女の子なんて居ないし、そもそも僕は下戸である。孤独は山になく、街にあると言ったのは誰だっただろうか。何事も孤独無しには成し遂げられないと言ったのはピカソだっただろうか。どちらも談志のマクラで聞いたような気がするが思い出せない。何ゆえそのような瑣末な事の思量に耽るのかというと、ここで過す余りにも素敵な昼下がりにコーヒーを飲んでしまったからで、眼が冴えて眠れないのである。でも、大丈夫ここの夜は怖くないからね。

<アプローチ>
折立から登山道を利用するか、ハゲ谷、ヤクシ谷を遡行し薬師沢へ下降する。詰めあがってからは登山道を利用すると早い。谷を下降すると面倒だと思う。

<装備>
特にいらない。全くの初心者が居る場合はロープが有ったら良い程度。磨かれた乾いた岩を歩くのでゴム底のほうが歩きやすい気がする。多分運動靴でも行ける。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。源頭はバイケイソウの大群落となっているので、満開時を狙っていけば素晴らしいと思う。他にも高山植物は豊富。

<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ

2016年6月20日月曜日

ウマ沢





赤木沢の支流ウマ沢を登った事ある人は少ないだろう。わざわざ美しい渓を背にして小さな沢に入っていく人間は稀だ。赤木沢と同じような内容を期待したが、そうは問屋がおろさなかった。時おりナメ滝が現れるものの、ゴーロ部分が多くパッとしない印象であった。しかし、そういう渓こそゆったりとした心持で自然観察に精が出せるというものだ。周囲の岩は礫岩を含んだ物が多い。しかも比較的大きな丸い礫が多く、温度や圧力による変成を受けているような感じがした。もしかしたら、古くは川が流れていた場所に溶岩が流れたり、火山灰が堆積したのかもしれない。その真相は解らないが思いを馳せるのは楽しい。

ウマ沢を詰めあがってハイ松の稜線を歩いていると、スレンダーな甲虫を見つけた。オサムシ科のマイマイカブリにそっくりであったが、直ぐに岩陰に逃げてしまったため記録することが出来なかった。これまでも稜線であのスレンダー甲虫は何度か見かけている。

もし、マイマイカブリであったら不思議である。彼らはその長い首で蝸牛の殻に首を突っ込み食べる。しかし、稜線にマイマイ類は居ない。彼らは何を食べているのだろう。マイマイカブリはマイマイ類を主食(かぶり付く)とする事からマイマイカブリであって、マイマイをかぶり付かないマイマイカブリは何と呼べば良いのだろう。

先述の疑問が提起する問題は根が深い。このように行動様式をもって命名するネーミング手法を濫用していては、アイデンティティーの危機が迫ってくるだろう。例えば琴奨菊が臥牙丸を常にがぶり寄りで圧倒して勝ち星を挙げ続けたら、琴奨菊はいずれガガマルガブリと成ってしまうのである。これでは、親方と考えた折角の四股名が台無しだ。

やはり行動による命名は控え、ビジュアルか発見者の思いを丹念込めて真剣に行うと良い感じに仕上がってくると思うのである。それはさておき、いつか登山を始めて以来の謎であるあの甲虫を突き止めたい。

<アプローチ>
折立から登山道を利用するか、ハゲ谷、ヤクシ谷、シンノ谷を遡行し黒部川へ下降する。詰めあがってからは登山道を利用すると早い。折角なので黒部五郎岳を登ると素敵だ。そこから折立までの下山路は非常に長く感じる。

<装備>
特にいらない。

<快適登攀可能季節>
7月~9月 夏休みに上ノ廊下を遡ったのち、五郎沢出合い辺りにベースを張って、ボルダリングと釣りをしながら沢登りをすると面白いと思う。わざわざ目当てに行く場所ではないので、ついでに登っておくのがよさそう。

<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ

赤木沢







富山が誇る最強のデート沢である。東面で明るく開けた谷にスラブの滝が幾重にも架かるその姿は万人が納得する美しさだ。側面の傾斜と草緑の演出が独特の味わいをもたらし、感嘆のため息が尽きる事がない。筆者は一度遡行し、一度下降しているが、いずれも単独だったため、冒頭で述べたよう本来的な意味でこの沢の素晴らしさを知らない。

不思議なもので、ナメのスラブとくれば明るければ明るいほど嬉しいし、ゴルジュとあれば暗ければ暗いほど浮き浮きする。相反する環境が類似した感情をもたらす、人間とは誠にもって因果なものである。自然美の認識は一体どこからやってくるのであろうか。などという雑念に駆られてしまうので、いつまでたっても本当の素晴らしさを知らない野暮天なのである。わかっちゃいるけど、やめられない。色即是空 空即是色。

<アプローチ>
折立から登山道を利用するか、ハゲ谷、ヤクシ谷を遡行し黒部川へ下降する。詰めあがってからは登山道を利用すると早い。谷を下降すると面倒だと思う。

<装備>
特にいらない。巻き道は非常にしっかりしている。ナメ小滝連続の登りで全くの初心者が居る場合はロープが有った方がよいかもしれない。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。8月に入ると人だらけになると思う。富山県民は地の利を利用し、雪解け解禁を狙って行く良い。さすれば、静けさと高山植物の趣を味わうことが出来る。


<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ

真川支流 ヤクシ谷





折立から登る真川支流の谷は沢登りとして遡行価値があるものが少ない。風化に弱い花崗岩で構成されているため、土砂が発生し谷が荒れているからだろう。ヤクシ谷も基本的にゴーロ。しかし標高1800mあたりで突如硬い岩が現れ、大滝とナメが現れる。おおっと盛り上がるのも束の間で再びゴーロとなり、やがて美しい草原の詰めとなる。沢登りのルートというより、太郎平への登路の一つとして捉えて楽しみたい。2つの大滝(20mくらい)はクラックもあるので登ったらそれなりに面白うそうだ。

<アプローチ>
折立から真川谷本流を歩いて取り付く。林道でアプローチしようとすると、現在地が掴みにくく嵌る可能性があるので本流を歩いた方が無難だと思う。下山は登山道を利用すると楽。

<装備>
遡行するだけならば特にいらない。全くの初心者が居る場合はロープが有ったら良い程度。
2つの大滝を登るのであればそれなりの岩ギアを要する。

<快適登攀可能季節>
7月~10月 

<温泉>
亀谷温泉白樺ハイツ

2016年6月17日金曜日

比良 猪谷



比良の沢の中では難易度が高いとされているが、難易度が高いとか悪いとかは沢登り界では御馴染みの用語で滝やゴルジュが出てきて面白いということである。猪谷はムードのあるゴルジュ内に快適に登れる滝が連続する。水量は少なめなので、時期や天候にそれ程左右されずに楽しむことが出来るだろう。悪く感じた場合も巻くことも容易である。春には北陸の沢よりも一足早く楽しむことが出来るのも良い。登攀系沢登りの入り口としてお勧め。

<アプローチ>
富山からは高速を利用して敦賀まで行き、国道161号(湖西道路)を経由し国道367号線でアプローチするのが早くて安価。下山は登山道と林道を利用できる。

<装備>
パッシブプロテクションを適当とピトンが少しあれば万全。

<快適登攀可能季節>
6月~11月

2016年6月13日月曜日

弥太蔵谷~瀬々薙谷















入渓後すぐに始まる石灰岩質の大ゴルジュに、450m左俣から始まる花崗閃緑岩の明るいゴルジュ、そして瀬々薙谷の赤みを帯びた花崗岩のゴルジュと一度に三度美味しい秀渓だ。沢の岩質は普通の人にしてみれば、アシカ、オットセイ、アザラシの違い、或いはジュゴンとマナティーの違いと同じくらいどうでもいい事かも知れないが、沢ヤには遡行内容に関わる関心事なのである。因みに私は列挙したすべての差異を重要視するような偏執狂である。

下部ゴルジュはルートファインディングに注意すればそれほど困難無く通過できる。水線突破は相当に難しそうだ。なお、右岸に綺麗な巻き道が付いているのでカットすることも出来る。中盤は流心突破したり、へつったり登るラインは自由に楽しめる。瀬々薙谷に入ると水量はぐっと減るが、深い釜を持った美しい滝を登っていく。源頭まで傾斜が緩くなっているのが不思議だ。詰めあがった稜線から30分ほど藪を漕げば、負釣山南峰に到着する。

<アプローチ>
このルートだと車二台が無難。負釣山登山道に一台車をデポして、宇奈月ダム展望台に駐車し入渓。一台しか無い場合は音谷を下降するのも面白そうだ。標高978mの負釣山南峰(立志の峰)からは登山道が整備されている。幕営適地は450m左俣に入ってゴルジュを抜けた先。瀬々薙谷に入ると良い場所はない。入渓点まで富山市内から1時間ほど

<装備>
カム少々、ピトン各種。下部ゴルジュを登らない場合は登攀具は少なくてよい。

<快適登攀可能季節>
6月~10月。オロロが発生する7月下旬~8月中旬は避けたほうが無難。突破が楽しいので上部に残雪があると遡行の魅力は半減しそうだ。

<温泉>
バーデン明日:負釣山を降りると直ぐに有る温泉。外観はちょっと古めかしいが、綺麗な温泉。
宇奈月温泉総湯:先日新しくなった館内はモダンな作り。お湯が熱くて長湯できない。

<博物館>
下山芸術の森発電所美術館:時おり興味深い展示をやっている。冬季は休館するので注意。
魚津水族館:歴史有る水族館で主に県内に生息する魚を展示。こじんまりとしているが魅力的な水族館。可愛いPOP解説も面白い。
魚津埋没林博物館:でっかい木が沈んでいるだけなのだが、なぜか趣がある。
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。謎の置物も気になる。

帰りには生地の道の駅で新鮮な魚を買って帰るのもいい。


2016年6月7日火曜日

尼厳山の岩場






クラックを利用して登る下部壁とボルトルートの上部壁からなる岩場。下部壁は#5までの大き目カムで支点を取るが、登り自体は意外にフェース的である。そのため、カムの構造としくみを学びながら登るのにぴったり。時々ジャミングを求められる点もよい。上部壁も高難度ルートは無いが面白いルートが多いと思う。終了点が無いルートもあるので、懸垂下降をするつもりで取り付いたほうが無難。

岩場から周囲を眺めた時、山並みから切り離された不思議な山が見える。かの有名な皆神山である。海底火山由来のこの山は、低重力地帯があったり、ピラミッドがあったり、旧日本軍の塹壕があったり、クロサンショウウオが生息していたりと、月刊ムー的な場所で隅に置けない山だ。

<アプローチ>
最短では国道8号線から148号線で白馬を経由し山越えで長野市に入る。上越まで行って国道18号線を利用すると遠いが片側二車線で快適。美しい海岸線のドライブも情緒があってよい。前者で3時間30分、後者は4時間で駐車場に着く。駐車は池田の宮を利用させていただいた。より広い場所が望ましいが、どこに駐車すればいいのかはよくわからなかった。登山道を20分ほど歩いて岩場に向う。

<快適登攀可能季節>
南面で藪も多く6月以降は不快と考えられる。晩秋と春先が良さそう。

<博物館など>
池田満寿夫美術館:池田満寿夫は長野市出身の多彩な芸術家である。ぶちまけてくる感じの作風で時に会心の一撃をくらう。

真田宝物館:池田満寿夫美術館のお隣。屏風に甲冑に茶道具と縁の品にお目にかかれる。

北斎館:小布施町にある葛飾北斎専門美術館。北斎は富嶽百景だけではない。北斎最晩年の大作、祭屋台の龍&鳳凰、男浪&女浪を観るだけでも訪れる価値はあると思う。とても80代が描いたとは思えない。

北野美術館:日本画、西洋画、蒔絵にギリシヤの陶器まで展示している美術館。企画展も四季を意識した風流なものが多く落ち着いた雰囲気。

水野美術館:キノコで有名なホクト株式会社が運営する日本画の美術館。横山大観の無我を所蔵していることで有名。庭園も素敵である。菱田春草の絵が印象に残った。市街地にあるので行くには渋滞覚悟で気合がいる。

<温泉>
松代荘:酸化鉄の析出が凄い塩分濃度の高い温泉。浴槽の入り口は析出によってハング帯を形成しており入浴時の足運びが難しい。加えて浴槽内は濁っており底が見えないので、慎重にクライムダウンして着水するようにしたい。

2016年6月5日日曜日

大平川 大滝谷








富山で沢登りを初めて体験するのは沢上谷や白水谷、美ヶ谷といった山頂に通じない沢で、ナメが綺麗で、藪が大した事が無く、山頂まで詰めあがらない場所が多い。通常そのような沢は稀であり、最初に行ってしまうとそれが標準となって沢登り=綺麗で快適なもの。という初期観念が形成されてしまい良くないと思う。やはり、泥と藪にまみれながら岩を攀り、げしゃげしゃになってこそSAWANOBORIである。

白鳥山に突上げる大滝谷は初心者を連れて行くにはもってこいの沢である。出だしの7m滝はそれなりのクライミングが楽しめ、そこからナメにゴルジュに小滝が続く。遡行距離も日帰りで短すぎない程度だ。稜線から山頂へは北陸らしいヤブコギとなるので、沢登りの要素総て詰まっているといえる。傷だらけになって着いた山頂から日本海を眺める頃には、後輩はもう沢登りの虜となっているだろう。

<アプローチ>
上路集落手前から入渓。車を2台使用するとスムーズ。その場合坂田峠が最も楽に降りられる。寺谷を下降してアンモナイトを探すのも面白い。なお、シナ谷への登山道はほぼ廃道となっているようだ。富山大学から国道8号経由でおよそ1時間

<装備>
ピトン各種。出だしの7m滝はピトンをしっかり決めて登りたい。あとはロープの必要は感じなかった

<快適登攀可能季節>
6月~11月。おそらく7月も登れると思うがオロロが発生する7月下旬~8月中旬は避けたほうが無難。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
下山芸術の森発電所美術館:時おり興味深い展示をやっている。冬季は休館するので注意。
魚津埋没林博物館:でっかい木が沈んでいるだけなのだが、なぜか趣がある。
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。謎の置物も気になる。

帰りには生地の道の駅で新鮮な魚を買って帰るのもいい。

2016年6月1日水曜日

敦賀門ヶ崎 海の岩場







沢のせせらぎも風情があるが、潮騒も又格別な情趣がある。それがクライミングと一緒ならば殊更素晴らしいものだ。とは言っても、城ヶ崎、大堂海岸、神須ノ鼻といった代表的シークリフは富山から非常に遠い。北陸3県では福井に蘇洞門や門ヶ崎に東尋坊といった海岸の岩場がある。その辺のエリアについて、クライミングの内容とスケールはさておき風情は特級品で間違いない。門ヶ崎の岩場は花崗岩質の岩場で、風化により脆い部分が多いものの、節理が豊富なのでラインは適当に選ぶことが出来る。探検気分で岩塔に立てば気分爽快。稜線の風も良いが潮風もまた格別なのである。

<アプローチ>
富山からは高速を利用して敦賀まで行き、白木海水浴場へ。漁港に駐車し、海岸線を西にトラバースすると岩場にたどり着く。うっかり水際に荷物を置くと潮にさらわれそうになるので注意。

<装備>
そこらじゅうにクラックが有るので、カムやナッツを持っていけば適当に登る頃が出来る。風化が激しいので、よく見極めて取り付きたい。ボルト支点のチェックは慎重に行いたい。釣り好きならば竿を持っていくと良い。

<快適登攀可能季節>
波が高くないとき。あんまり暑くないとき。

<博物館など>
敦賀原子力館:門ヶ崎の直ぐ近くには高速増殖炉もんじゅがある。原発の利用は賛否が有るだろうが、その原理と工学的な機構は興味深い。冷媒にナトリウムやカリウムを使用する合理的で大胆な発想に感心した。漏れちゃったけど。